エンジンの熱を排出し、オーバーヒートから車を守る役割を担うパーツがラジエターです。
その中に入っている冷却水(クーラント)は、冷却水の凍結を防いだり、冷却水ラインに発生するサビを防止したりする役目があり、このクーラント液は2年に一度の交換が基本(主成分であるエチレングリコールが熱劣化や酸化してしまうため)となっています。
特に、冷却水の色(色が違うだけで成分は同じ、混ぜてもOK)が元々の緑(トヨタ、ダイハツ)や赤(その他のメーカー)などではなく、茶色っぽく変色してきている場合はクーラントが劣化しているサインです。
お店にクーラント液の交換を依頼すると5,000~8,000円(クーラント液、工賃含む)ぐらいの費用がかかってしまいますが、自分でDIYすればラジエター洗浄(冷却ラインに付着したカルキなどの無機成分の除去)を含めて約2000円程度と格安交換することができます。
そこで今回は、自分でラジエター洗浄とクーラント交換の具体的なDIY方法について、写真付きで詳しくお話していきます。
ラジエター洗浄&クーラント交換に必要なものまとめ
まずはじめに、ラジエター洗浄とクーラント交換に必要なものについてお話していきます。
ラジエター洗浄剤
ラジエターの洗浄は、クーラント交換前に上記のような洗浄剤をラジエターに投入し、エンジンを始動して薬液がエンジンの隅々まで行き渡らせた後に、汚れを含んだクーラントを排出するという方法で行います。
なお、今回使ったラジエターの洗浄剤(Holts、約500円)はその辺のホームセンターやカー用品店などで購入可能となっています。
この洗浄剤はクーラント5~10Lに対して1本の割合で使用するということなので、よほど大きな車でない限りは1本だけで対応できると思います。
クーラント液
次に必要なものは、古いクーラントを抜き取った後に注入する新しいクーラントです。
今回の方法では、ラジエター洗浄剤や水道水などで一度冷却ラインをきれいに洗浄した後に、クーラントを注入する(冷却ラインに水道水が残る)ため、水道水で希釈して使うタイプ(濃度が90%以上のもの、そのまま使える40%前後のものではない)を使いました。
上記の写真の製品(KYK、ロングライフクーラントEX)だと2Lで800円程度でした。
必要となるクーラントの量は車種によって異なりますので、事前に「車種名 クーラント 交換量」などとWEB検索して、必要な分だけ購入しておきましょう。
ジャッキやウマ、タイヤストッパーなど
クーラントは車のフロント側の下側(ラジエターキャップ)から排出しますので、作業がしやすいように車をジャッキアップ&ウマで固定する必要があります。
なお、ジャッキアップやウマの使用は危険が伴いますので、万が一車が落ちてきたときにも体が挟まれないようにホイールを車体の下に置いておくなどして安全を確保した状態で行ってください。
廃液を受け止めるケース
クーラントを抜き取る際に、廃液を受け止めるための容器が必要となります。
今回の方法では、ラジエターの中に入っている分の冷却水(数リッター程度)を受け止めるだけの大きさが必要ですので、10Lぐらいの水が入る容器を準備しておけば溢れてこないと思います。
プラスドライバー
冷却水を排出口はラジエター下側のプラスチックキャップを外して行います。
その際にプラスドライバーが必要となりますので準備しておきましょう。
廃液処理に必要なもの(ポリタンクなど)
クーラントは環境に悪影響を及ぼす液体(エチレングリコール)なので、側溝や下水に流して捨てることができません。
使用後のクーラントは、クーラントの販売店やガソリンスタンド(ピットサービスのあるところ、行きつけのところがベター)で引き取ってもらう(有償の場合が多い)か、直接産業廃棄物処理業者にクーラントを持ち込んで処分(有償)してもらわなければなりません。
LLC交換に関する法制度
①産業廃棄物処理法
交換時の廃液は、各事業所から出る廃棄物として、産業廃棄物処理法に基づき処理する必要があります。②PRTR法
PRTR法とは、対象の化学物質が環境保全に支障をきたすことを未然に防止するため、環境への排出量の把握と届け出を行う制度として制定されました。
この法律により、対象の前年度排出量を2002年6月から 報告する必要があります。
LLCに関しては、その主成分のエチレングリコールが第1種指定化学物質に指定されており、取り扱い量が一定以上の場合、排出量、移動量を都道府県知事に報告の義務があります。③水質汚濁防止法
④海洋汚染防止法出典)危険物、有害物の取扱い|自動車整備士.com
抜き取ったクーラーンとは一度上記のようなポリタンク(約500円程度)に貯めておき、業者に依頼して処分するようにしましょう。
この他にも、高吸水性樹脂(簡易トイレなどで使われている水分を含むと膨らんでゲル固形化するもの)などでクーラントを固形化し、市のゴミ回収に出すという方法もありますが、市区町村によってゴミの分別などが異なりますので、この場合は事前にお住いの地域の市役所などに問い合わせてみるのがいいでしょう。
クーラントの交換で一番問題になるのがこの廃棄方法についてですので、事前にこの辺りのことを調査確認しておくことをおすすめします。
スポイトやボトルなど
ラジエター洗浄剤を投入する前に、投入する洗浄剤の容量分のクーラントを抜き取っておく必要があります。
その際に使うのが、先端の長いプラボトルやスポイトです。
使いやすいものでいいので、ホームセンターなどで購入しておきましょう。
その他工具
クーラントを交換するためには、エンジンルーム下の樹脂パネルなどを取り除かなければならない車種がありますので、取り外しに必要な道具(10mmのスパナ、マイナスドライバーなど)を準備しておきましょう。
クーラントの具体的な交換方法
ここからは、クーラントの具体的な交換方法についてお話していきます。
ラジエター洗浄剤を注入する
まずはじめにやっていくことは、ラジエター洗浄剤の注入です。
この洗浄剤はラジエター(アルミ製の熱交換器、樹脂製のクーラント補充用サブタンクではない)に注入する必要があるのですが、通常の状態だとラジエターは満水となっていて、このままの状態では洗浄剤を注入することはできません。
そこで、先端の長いプラスチック容器やスポイトなどを使って、洗浄剤の容量と同量のクーラントをラジエターから抜き取ります。
このときの注意点として、エンジンが熱いときにラジエターキャップを開けてしまうと、沸騰した冷却水が吹き出してきますので、エンジンが十分に冷えた状態で作業するようにしましょう。
クーラントを抜き取った後は、洗浄剤をラジエターに注入していきます。
洗浄剤を注入したらラジエターキャップを締めておきましょう。
洗浄液を冷却ライン内に循環させる
ラジエターの洗浄は洗浄剤(クエン酸、賛成)を入れた状態で20分以上アイドリングするか、100km程度走行し、エンジンの内部に溜まったカルキ(アルカリ性)などを中和して分解除去していきます。
2日間までは洗浄液を入れた状態で走行しても良いと記載がありますので、この状態でしばらく車を走行させましょう。
このときの注意点は、走行中はヒーターを最大温度に設定して、クーラント洗浄液がヒーターコアの方にも流れるようにしてあげる点です。
特にミニバンなどの場合、フロントだけではなくリアにもヒーターがついていることがありますので、後部座席側の温度調整もできる場合はそちらの方も設定温度を最大にしてあげるといいと思います。
冷却ラインを水道水で濯ぐ
ここからは、冷却ラインの中にあるクーラントや洗浄剤を抜き取り、水道水で冷却ラインを濯いでいく工程となります。
まず、車をジャッキアップして安全を確保して固定し、エンジンルーム下のアンダーカバーを取り外していきましょう。
アンダーカバーを外すとエンジンが見えてきます。
ラジエターはエンジンルームの前側についていて、ラジエターの下部に樹脂製のドレンキャップがついているのが分かると思います。
ここまで準備ができたら冷却水を受け取るための容器をラジエターキャップの下に置き、プラスドライバーでラジエターキャップを取り外してやりましょう。
すると、下記のような感じでラジエターの中にあるクーラントがポトポトと少しずつ出てくると思います。
この後、エンジンルームの中にあるラジエターキャップを開けてやると、ラジエター内に空気が入ってきて、下記のようにクーラントがジョーっという音を立てて排出されるようになります。
この車の冷却水の規定量は約9Lナノに対し、この状態で抜き取れるクーラントの量は3L程度ということから、現状では約1/3程度しかクーラントが抜けていないということが分かります。
また、クーラントの色を見てみると分かりますが特に茶色っぽくなっている様子もなく、冷却水の状態は良好だということも見てとれます。
この車の場合、2年に一度の頻度でクーラントを交換しているため廃液の色がこのような色をしていますが、クーラントの交換を何年もやっていないような車だと、クーラントの色が茶色く濁ってしまっていたり、冷却ラインで発生したサビが廃液に混ざっていたりすることもあります。
冷却ラインがやられてしまうとオーバーヒートして車が動かなくなったり、修理のために多額の費用がかかってしまったりするので、車検などのタイミングでクーラントを定期的に交換しておくのがいいと思います。
なお、一般的な整備工場などではこの冷却水抜き取りのタイミングで冷却水ラインのホーシングを外したり、エンジンブロックのドレンボルトを外したりして、できる限り冷却水を排出した後、40%程度に希釈したクーラントを規定量補充してクーラントの交換を完了していきます。
ただ、DIYでクーラントを交換する場合、きれいにクーラントを全量抜き取るのは難しいですし、特に洗浄剤などを使ってラジエター洗浄などをした場合、冷却ラインにそれらの薬液が残っているのはあまり好ましくありません。
ですので、私の場合、以下の工程で水道水で冷却ラインを洗いだ後、クーラントを注入するという方法を採用しています。
冷却ラインを水道水で濯ぐ手順
- ラジエターのドレンボルトを締める
- 水道水をラジエーターに満水になるまで注入する
- ラジエターキャップは開けたままアイドリング(ヒーター温度最大)してラジエター内の水道水を循環させる
- ラジエターの注入口から空気がプクプクと浮いてきて、冷却水の水面が下がったら水道水を補充する
- 10分ほどアイドリングさせたらエンジンを止めて、ラジエターのドレンボルトを緩め、冷却水を抜き取る
このプロセスを何度も繰り返していくと、排出される冷却水の色が緑色から無色透明になっていきます。
1回目に抜き取った廃液
一番最初に抜き取ったクーラントはこのような感じで深緑色をしています。
水道水濯ぎ5回目の廃液の色
上記の方法で5回ほど濯いだ後のクーラントの色はこのような感じで大分緑色が薄くなってきました。
水道水で10回濯いだ後の廃液の色
10回濯ぐとこのぐらい廃液の色が透明になってきますが、まだ無色透明という感じではありません。
水道水で15回濯いだ後の廃液の色
冷却ラインの濯ぎ作業を始めてから3~4時間が経過し、ようやく15回目の濯ぎが終わりました。
ここまで来るともう完全に廃液は無色透明といった感じです。
クーラントの注入
冷却ラインの濯ぎが終わったら、新しいクーラントをラジエターに希釈注入していきます。
現状、冷却ラインの中は水道水で満たされていますので、ラジエターキャップを取り外し、ラジエターの中に入っている水道水を抜き取ります。
先程もお話しましたが、この車のクーラント規定量は約9Lでこの段階で抜き取れる水の量は約3~4L程度となります。
この状態でラジエターにクーラントの原液(濃度90%程度)を希釈せずに満タンになるまで注入していきます。
仮に濃度90%のクーラントが4L、水道水が5Lになった場合、冷却ラインに入っているクーラントの濃度はだいたい40%前後になると思います。
クーラントの濃度は主に冷却水の凍結温度と防錆能力に関係してきますが、新車の段階で30%、寒冷地仕様であれば50~60%という感じです。
LLC濃度 | 凍結温度 |
---|---|
30% | -15℃ |
40% | -24℃ |
50% | -36℃ |
60% | -54℃ |
薄すぎると冷却水が凍結してしまう恐れや冷却ラインにサビが発生してしまう可能性があります。
また、逆に濃すぎるとラジエターの冷却能力が低下(水に対してエチレングリコールの比熱は半分程度しかないため)し、エンジンがオーバーヒートしてしまうこともあります。
これらのことを参考にクーラントの濃度を決めていきましょう。
ちなみに、WEBで「クーラントテスター」と検索すればクーラントの濃度の測定器を2000円程度で購入できますので、ご参考まで。
エア抜き
冷却水交換後に行わなければならないのがエア抜きです。
冷却水を交換するとどうしても冷却ラインの中に空気が入ってしまいます。
エンジンの冷却は冷却ラインがクーラントで満たされているとき動作するような仕組み担っていて、そこに空気が混ざってしまっていると冷却能力が低下してしまい、そのままの状態で走行してしまうとオーバーヒートの原因となります。
ですので、本格的に走行を始める前に、ラジエターの中に溜まった空気を追い出し、それによって減った冷却水を補充するという作業を行わなければなりません。
具体的には、冷却水を充填後、ラジエターキャップなどをすべて閉じ、ヒーターの温度を最大にした状態でアイドリングさせて十分にエンジンを温めながら冷却水を循環させます。
その後、エンジンが十分に冷えるまで待ってラジエターキャップを開けると冷却水が減っています(冷却ラインに入り込んでいた空気がラジエターの上部に溜まってくる)ので、減った分の冷却水を補充してやります。
これを2~3度ほど繰り返せば、ほぼほぼ冷却ラインのエアは抜けてきます。
後は、ラジエターの脇についているクーラント補充用のサブタンクを適正濃度のクーラントで満水にしておけば、走行後、エンジンが冷えるタイミングでサブタンクからラジエターに冷却水が供給されます。
クーラント交換直後は、サブタンク内の冷却水の減りが早いですので、走行のたびに確認してくといいでしょう。
クーラントの交換直後は上記の方法でエア抜きを行っても多少は冷却ラインに空気が残ってしまっていることが想定されますので、エンジンを過度に回さずゆっくり走行することと水温計をチラチラ確認して水温が異常に高くなっていないか確認することを心がけましょう。
水温計が「H」の方に振れてきてしまったら、すぐに車を停車させ、エンジンは切らずにヒーターを全開にして、ボンネットを開きましょう。
そして十分に水温が下がったらエンジンを切り、そこから十分にエンジンを冷やして、減っている分のクーラントをラジエターに補充してあげてください。
基本的に、今回紹介した方法はラジエターの中の冷却水だけを交換していくので、冷却ラインに入る空気の量は比較的少なめとなりますので、上記のようなことは起こりにくいですが、万が一のときはこのように対処するといいでしょう。
お疲れ様でした。
これでラジエター洗浄とクーラント交換が完了です。
最後に一言
今回は、【DIYラジエター洗浄】自分でクーラント(LLC)を交換する方法まとめについてお話しました。
LLCの交換はオイル交換よりも少しDIYレベルが高くなりますが、時間をかけて一つづつこなしていけば自分でやり遂げることができる作業内容だと思います。
ただ、本当に車の整備作業が初めての場合であったり、LLCの廃棄処分に困ってしまう(排水に流してはダメで、整備工場などで引き取ってもらったりする、引取を断られたりすることもある)のであれば、はじめのうち(LLCの廃液を引き取ってくれるお店を見つけるまで)はプロに作業を依頼するのがいいのではないかと思います。
是非参考にしてみてくださいね。
それでは!