輸入車の定番トラブルのひとつとしてあげられるのがラジエター周辺からの冷却水漏れです。
特に、BMWやベンツなどの欧州車のほとんどはラジエター周りが樹脂パーツで構成されていて、製造から5~10年が経過すると、それらのパーツに微小クラックが発生し、冷却水が漏れ出すということが起こってきます。
このようなメカニズムで発生するクーラント漏れの場合、冷間時(エンジンOFF、始動直後など)は冷却水の経路に圧がかかっていないため漏れは発生せず、エンジンが十分に温まってサーモスタットが開き、冷却経路に圧がかかり始めると、微小なクラックに隙間ができそこから冷却水がにじみ出るという感じになります。
冷却水漏れの修理はそういった割れが発生した劣化パーツを交換するのが基本です。
ただ、応急処置として、例えば車検まであと少しなのでそれまで持ってくれればいいので、自分で簡単に直すことができないかなど、そんなときに使えるのが漏れ止めを使った修理です。
今回は、そんな輸入車の樹脂パーツ劣化クラックの冷却水漏れ止め方法について、詳しくお話してきます。
輸入車の冷却水漏れ止めに必要なものについて
まずはじめに、冷却水漏れ止め作業に必要なものについてお話していきます。
漏れ止め材
BMWやベンツなどドイツ車の漏れ止め作業で一番気をつけないければならないのが、漏れ止め剤の選び方です。
というのも、ドイツは日本ほど温暖な地域ではないため、冷却システムが日本車ほど大容量(クーラントの流路の直径が大きい)ものではないため、ホームセンターなどで売られているような強力な漏れ止め材を使ってしまうと、ウォーターラインの壁面にくっついた漏れ止め剤のせいで冷却水の流量が減り、オーバーヒート気味になってしまうことがあります。
ホース内部に白い膜を作っています。
この膜が、クーラントが流れることで、剥がれたりすると、ラジエーターなどを詰まらせてしまいます。
この膜自体もラジエーター内の通路を狭くしてしまいます。
一般的なホームセンターなどで売られている漏れ止め剤は日本車を対象としているため、BMWやベンツのような輸入車には使用しないでくださいというような注意書きがあるものがほとんどです。
また、欧州車はサイドフロータイプラジエターが採用されていることが多く、この場合、一般的な漏れ止め剤を使ってしまうとラジエターの下側に薬剤が溜まってクーラントの流れを悪くしてしまう場合があります。
そのため、先程と同様、多くの漏れ止め剤は「サイドフロータイプのラジエターの場合は使用不可」というような記載があります。
現在のところ、通販で手に入る欧州車(サイドフロー)向けの漏れ止め剤は以下の2種類があります。
【漏止剤①】バーダル(BARDAHL) ラジエターストップリーク
バーダルのラジエターストップリークは、注意書きに記載の車種を除くほとんどの車に対応することができる漏れ止め剤です。
具体的な投入不可車種は以下の通りで、それ以外の車種は使用可能ということになっています。
この漏れ止め剤は比較的強めの製品となっていて、約1mmぐらいまでの穴であれば漏れを止めることができます。
Q;RSL(ラジエターストップリーク)はどの位の漏れに効果がありますか?
A;約1mm位の穴であれば、止める事が可能です。又、液漏れ予防剤として通常の不凍液や冷却水及び防錆剤に混合して使用する事ができます。
【漏止剤②】ウルト(WURTH)ラジエーターシールHP
もう一つウルトのラジエター漏れ止め剤も欧州車にも使うことができます。
漏れ止め剤としての強さは弱めで、0.1mm程度までの微細なクラックに対応しています。
冷却システムのシリンダーヘッドパッキン及びホースの接合部分などに生じた最大0.1mmまでの微細なクラックからの漏れを補修・予防します。
この漏れ止め剤の良いところは、欧州車やサイドフロー式ラジエターにも対応していること、そして、最終的にパーツ交換などした後に漏れ止め剤を含んだクーラントを抜き取れば、漏れ止め剤もきれいに排出することができるという点です。
今回のクーラント漏れはサブタンクが加圧されたときだけ冷却水がにじみ出てくる程度のものですので、このウルトの漏れ止め剤(アマゾン、2640円)をネット購入して使うことにしました。
冷却水を抜くための道具
次に準備する必要があるものは、冷却水を抜くために使うものです。
今回は、シャンプーポンプとストロー、ビニールテープを使って簡易クーラント抜き取り器を作りました。
クーラントを抜き取る際、ペットボトルや瓶などがあるとクーラント受けることができるので、それも準備しておくとよいでしょう。
抜き取る量は投入する漏れ止め剤の量(約300mL)だけですので、100円均一などで大きめの注射器やスポイトなどを買ってきて使ってもいいと思います。
漏れ止め剤の具体的な施工手順
ここからは、漏れ止め剤の具体的な施工手順についてお話していきます。
エンジンを暖気運転する
まずはじめに、エンジンをONしてサーモスタットが開いて冷却水がラジエターまで流れてくるぐらいまでエンジンを温めます。
エンジンが温まったらエンジンを切り、しばらく粗熱が取れるまで冷ましていきましょう。
冷却水を抜き取る
エンジンを止めて粗熱が取れるまで待った後、少しづつラジエターキャップを開き、圧を逃しながら、ゆっくりとラジエターキャップを取り外していきます。
この際、急にラジエターキャップを開けてしまうとクーラントが吹き出してやけどしてしまったりしますので、細心の注意をしながらキャップを外していきましょう。
この段階で準備しておいたポンプを使って、クーラントを抜き取っていきます。
抜き取る量は投入する漏れ止め剤の量と同量、または少し多めとなります。
冷却水は温まっていますので、火傷しないように注意しながら抜き取っていきましょう。
漏れ止め剤を投入する
ここまで準備ができたらようやく漏れ止め剤の投入です。
今回使うウルトの漏れ止め剤は、うすい青緑色をした薬液で、中にキラキラした粉末のようなものが入っています。
この漏れ止め剤をサブタンクに投入していきます。
漏れ止め剤を入れたらラジエターキャップを締めます。
アイドリングする
あとは漏れ止め剤投入後、全体に行き渡らせるために冷却ファン(ラジエターファン)が回るぐらいまでしっかりとアイドリングさせてやれば、漏れ止め剤の投入作業は完了です。
【漏れ止め剤投入前】
【漏れ止め剤投入後】
漏れ止め剤投入後はエンジンが温まった後でもクーラントが漏れ出てくることはなくなりました。
最後に一言
今回は、【BMW冷却水漏れ】漏れ止め剤を使った簡単な修理方法についてお話しました。
ウルトの漏れ止め剤は少し値段は高めですが、欧州車でも、サイドフロー式ラジエター車にも安心して使うことができます。
微小なクラックによる滲み程度のクーラント漏れには効果的ですので、是非参考にしてみてくださいね。
それでは!