車のトラブルで一番多いと言われているのが、バッテリー上がりです。
そのバッテリー上がりを未然に防ぐための方法として、自動車に小型のソーラーパネルの取り付るのが効果的だと言われています。
ただ、ソーラーパネルの取り付けでバッテリー上がりを予防するためには、丁度良い発電量のソーラーパネルを選ぶ必要があったり、パネルや配線の取り付け方を工夫しなければならなかったりります。
そこで今回は、車のバッテリー上がりを未然に防ぐソーラーパネルの取り付け方について、詳しくお話していきます。
自動車用ソーラーパネルを設置するために必要なもの
まずはじめに、自動車用ソーラーパネルを設置するために必要なものについてお話していきます。
【必要なものその1】ソーラーパネル
自動車のバッテリー上がりを効果的に予防するためには、ソーラーパネルの選定が重要です。
ソーラパネルの選定方法について、選定ポイント別に説明していきます。
①発電量
ネットなどで、自動車用のソーラーパネルを探してみると、いろんな大きさのものがあると思います。
基本的な考え方として、ソーラーパネルは面積が大きくなると発電量が大きくなりますが、大きくなりすぎるとパネルの設置場所(車内が基本)に困ってしまいますし、逆にソーラーパネルが小さすぎると、バッテリー上がりを予防するだけの電気を発電できない可能性もあります。
では、「どうやって最適な大きさのソーラーパネルを選定すればいいのか?」ということについては、自動車の暗電流(エンジンOFFでも消費されている電流)と、バッテリーの自己放電の分をカバーできればOKという風に考えましょう。
暗電流とは自動車のエンジンOFFの状態で消費されている電流のことで、一般的な自動車で20~50mA程度(社外のセキュリティーパーツなどを取り付けると75mAなどになることもある)となっています。
実際の暗電流を計測するには、バッテリーのマイナス側ターミナルを外し、下記のような感じでテスターを割り込ませる形で接続すれば簡単に測定することができます。
写真では見えにくいですが、私の車(エルグランド)の場合の暗電流は約30mAでした。
注意点としては、バッテリーターミナルを外すとカーナビなどのメモリーがリセットされてしまいますので、それが嫌な場合は上記の一般的な値を代用すればいいと思います。
次に、バッテリーの自己放電(自然放電)についてですが、自己放電とはバッテリーは何も接続されていないような状態においても、バッテリー内部で勝手に放電していってしまう現象のことをいいます。
自己放電の量は、バッテリーに充電されている電気のうち、一日あたり0.1~0.2%程度(近年主流のカルシウムバッテリーの場合、バッテリーの大きさや環境温度によって変動する)が消費されると言われています。
例えば、バッテリーの容量が80Ah(バッテリーに記載されている5時間率の値、型番の前の2桁の数字のこと)の場合、自己放電の電流値(ざっくりとした換算値)は以下のようになります。
80[Ah] ÷ 5[h] × 0.002(自己放電率)[-]
=0.032[A]
=32[mA]
よって、先程テスターで測った暗電流(約30mA)と自己放電の電流換算値(32mA)を足し合わせると、62mAとなります。
このことを知った上で、62mAを発電することができるソーラーパネルを探してみると、結構小さめなものでもOKなように感じます。
ですが、暗電流や自己放電は24時間常に発生しているものに対して、ソーラーパネルは夜間の発電ができませんので、単純に一日の半分がソーラーパネルの発電可能時間としたら、ソーラーパネルに要求される発電電流は124mA(62mA×2、夜の分も昼間に発電しておくため)となります。
また、昼間の時間帯でも曇りや雨の日など気象状況や取付位置(車内)や取り付け角度などの影響によって実際のソーラーパネルの出力電流は、カタログ値の約1/4程度になってしまいます。
このことも考慮すると、ソーラーパネルに求められるカタログに記載の発電電流値は、496mA(126mA×4)ということになります。
よって、今回のケースであれば定格出力が約500mAぐらいのソーラーパネルがあれば、暗電流と自己放電による消費分をちょうどカバーできると判断することができます。
ちなみに、一般的な充電電流はバッテリー容量(今回の場合80Ah)の1/10の電流、つまり8A程度が目安とされています。
それに比べるとソーラーパネルの発電電流(250mA、0.025A)は定格充電電流の1/30程度となります。
また、平均すればソーラーパネルで発電された電気は暗電流と自己放電によってちょうど消費されることになりますので、ソーラーパネルによる発電で充電しすぎる(過充電になる)ということは考えにくく、この程度だとバッテリーへの充電し過ぎを防ぐための過充電防止回路を設置する必要はないと考えていいでしょう。
②逆電流防止ダイオード
ソーラーパネルは、単体だと日光が当たっている時は発電してくれますが、夜間などは逆に放電してしまうという性質があります。
ソーラーパネルを取り付けても、せっかく日中に充電した電気を夜間に放電してしまっては意味がありませんよね。
この夜間の放電を自動で止める(電流が逆に流れないように遮断する)役割を担うのがダイオードというパーツで、ソーラーパネルを購入する際に、ダイオードが内蔵されているかどうかを確認しておきましょう。
上記の①発電電流と②ダイオード内蔵のソーラーパネルをネットショップで探すと、2000~4000円程度の物が見つかると思います。
今回、私の車に搭載するのは以下のカタログ上の発電電流値が約500mAのソーラーパネルに決定しました。
このような感じで、自動車に搭載するソーラーパネルの選定に関しては上記のようなステップで選定していくといいと思います。
【必要なものその2】ヒューズ電源
ソーラーパネルで発電した電気をバッテリーに充電するための一番簡単な接続方法は、ワニ口クリップをバッテリー端子に取り付けたり、シガープラグをシガーソケットに差し込んだりする配線方法です。
ソーラーパネルには、それらの配線が付属していることが多いのですが、ワニグリクリップをバッテリーに取り付ける方法は、常時充電するには向きません(外れたりすること困る)し、シガープラグタイプを利用できるのは、イグニッションOFFでもシガーソケットが通電されている外国車に限定されます。
色々検討した結果、ソーラーパネルの配線(+側)をヒューズボックス内にあるエンジンOFFでも通電しているルームランプに、カー用品店などで売られている平型ヒューズ電源を取り付け、そこからバッテリーに電気を送ってやるのがいいのではないかと考えました。
今回使った平型ヒューズ電源は、同じ容量(10A)のものをホームセンターで500円ぐらいで購入しました。
ちなみに、ヒューズ電源は同じ容量(10A)でも、ヒューズの形状によって標準タイプ(右)とミニタイプ(左、最近の車はこちらのタイプが多い)がありますので、注意してください。
【必要なものその3】クワ型端子セット
ソーラーパネルのマイナス側の配線は、車のボディなどの金属部分に取り付ける(ボルトと共締めする)必要があります。
その際の配線加工に使うのがクワ型端子というもので、ホームセンターなどで200円ほどで購入することができます。
【必要なものその4】ワイヤーステッカー
ソーラーパネルの配線を固定するために必要なのが、ワイヤーステッカーと呼ばれるパーツです。
今回は、配線の固定だけではなく、ソーラーパネルの固定にも活用しました。
ワイヤーステッカー(200円程度)はホームセンターなどで購入することができます。
【必要なものその5】結束バンド
結束バンドは、ソーラーパネルの余った配線を束ねて固定する時に使いました。
【必要なものその6】ニッパー
ソーラーパネルの配線を切断したりする時にニッパーを使います。
100円均一などでも購入できますので、準備しておきましょう。
【必要なものその7】ドライバー(プラス、マイナス)
プラスドライバーは、ソーラーバッテリーのマイナス側の配線をボルトに共締めする際に使います。
マイナスドライバーは、ソーラーパネルの配線を内装の隙間に押し込む際に使いました。
【必要なものその8】テスター(必要な場合のみ)
車の暗電流を測定したり、ソーラーパネルの発電電流を測定したりする場合は、上記のようなテスターが必要となります。
ホームセンターに行けば、安いものだと1500円ぐらいで購入することができます。
稀に、電圧[V]しか計測できないタイプの物が売られていますが、電流[mA]も計測できるタイプのものを選びましょう。
車にソーラーパネルを設置する具体的な方法
ここからは、車にソーラーパネルを設置する具体的な方法についてお話していきます。
【STEP1】ソーラーパネルの設置位置を決定する
まずはじめに、ソーラーパネルの設置位置を決めていきます。
ソーラーパネルの発電効率を考えると、ソーラパネルは車外の直射日光が当たる場所か、フロントガラスの内側に貼り付ける感じで取り付けるのがいいでしょう。
ただ、ソーラーパネルが防水仕様になっているものは少ないですし、走行中にパネルが外れてしまったりしては危ないので、パネルは車内に設置するのがおすすめです。
また、車内のフロントガラスにパーツを取り付けるという場合にも、道路運送車両の保安基準を守る必要があります。
フロントガラスの下側に貼り付ける場合は、以下の前方視野基準を守る必要がありますが、ソーラーパネルを設置するとそれが守れなくなります。
逆に、フロントガラスの上部に取り付ける場合、フロントガラスの上部20%に収まる大きさの範囲であれば可能かもしれません。
ただし、上記の資料はドライブレコーダーの取り付けに関する資料で、単純に太陽光パネルに適用できるとは限りません。
これらのことを考慮し、ソーラーパネルの発電効率よりも運転に支障が出ないことを優先して、ソーラーパネルはダッシュボードの上に水平設置することにしました。
この位置であれば、助手席のエアバック(ダッシュボード左側)が作動しても干渉しませんし、前方の視界を遮ることもありませんね。
【STEP2】ソーラーパネルの配線を加工する
ソーラーパネルの設置位置が決まったら、ソーラーパネルの配線を加工していきます。
ソーラーパネルにはこのような配線が付属していますが、この中のクリップタイプの配線を加工していきます。
まず、マイナス側の黒いワニ口クリップが付いた方の配線をカットして、クワ型端子を取り付けましょう。
※今回はニッパーで作業していますが、圧着端子専用の工具で作業することをおすすめします。
次に、赤色のワニ口クリップが付いたプラス側の配線を加工し、ヒューズ電源配線を取り付けます。
今回は、配線の接続にホームセンターで見つけたワンタッチタイプの配線コネクターを使って接続していきます。
こうやってしておくと配線を簡単に切り離すことができて、ここにテスターを割り込ませることによって太陽光パネルから発電される電流値を測定することができるようになります。
【STEP3】プラス側の配線をヒューズボックスに取り付ける
次は、プラス側の配線をヒューズボックスに取り付けていきます。
ヒューズボックスは車種によって場所が異なりますが、私の車の場合、運転席のグローブボックスの裏にありました。
どれが何のヒューズなのかということについては、取り外したグローブボックスの裏側を見ると分かります。
今回ソーラーパネルのプラス配線を取り付けるのは、エンジンOFFでも常に電気が流れているルームランプにしました。
ヒューズボックスの真ん中に設置されていたヒューズ抜きを使って、こんな感じでルームランプのヒューズを抜き取ります。
その後、ソーラーパネルのプラス配線のヒューズ電源を抜き取ったところに挿入。
これで、ソーラーパネルのプラス側の配線取り付けは完了です。
【STEP4】マイナス側配線を取り付ける
次は、ソーラーパネルのマイナス側配線をボディアースできるネジと共締めしていきます。
運転席の足元にある鉄板パーツなどに締め付けられているネジを見つけ、そこにマイナス配線を共締めしました。
これで、マイナス側の配線の取り付けも完了です。
【STEP5】配線を上手く隠して固定する
後は、ダランとなっている配線を上手く隠して固定していきましょう。
ソーラーパネル側は、ワイヤーステッカーを使ってダッシュボード上の配線を固定したり、マイナスドライバーをうまく使ってダッシュボード脇にある内装モールの隙間に配線を隠したりしていきます。
運転席下のヒューズボックス側は、余った配線などをタイラップでまとめて、運転の邪魔にならないところに固定しておきました。
【STEP6】ソーラーパネルと配線を接続する
ここまで準備ができたら、ソーラーパネルと配線を接続していきましょう。
これで、ソーラーパネルによる発電が開始されました。
【STEP7】ソーラーパネルを固定する
あとは、ソーラーパネルを余っていたワイヤーステッカーでダッシュボードに固定します。
ワイヤーステッカーはあまり強く押さえつけるとパネルを割ってしまう可能性があるため、少し抑える程度でOKです。
お疲れさまでした。
これで、ソーラーパネルの設置は完了です。
車にソーラーパネルを設置することのメリット
まず、車へのDIYソーラーパネル設置のメリットについてお話していきます。
【メリットその1】一瞬でエンジンがかかるようになる
ソーラーパネルを設置して1~2ほど経つと、明らかにエンジンを掛けた時の音の違いに気が付きます。
取り付け前は、「ギュルギュルギュル・・・ブゥーン」という感じでしたが、今は「ギュルッ、ブゥーン」という感じで、一瞬でエンジンがかかりました。
この違いは、バッテリー交換をした時に感じるセルモーターの回り方の違いぐらいでした。
このように、はっきりと取り付けた前後での効果の差を感じられるのが、ソーラーパネル設置のメリットだと思います。
【メリットその2】定期的に充電器を繋がなくて良くなる
一番のバッテリーの劣化の要因となるサルフェーションを防ぐためには、なるべく満充電の状態を保つ必要があります。
車は走行中に発電した電気でバッテリーを充電する仕組みになっているため、一回あたりの車の走行時間や距離が短かったり、稀にしか車に乗らなかったりすると、バッテリーの中の電気が暗電流や自己放電によってなくなってしまい、その結果サルフェーションによるバッテリーの劣化が進みやすくなってしまいます。
それを呼ぼうるためには、定期的にバッテリーにコンセントタイプの充電器を接続し、バッテリーを充電してあげるというメンテナンスが必要でした。
ですが、ソーラーパネルの場合、一度設置してしまえば、あとはほったらかしにしておいても太陽が出ている間は自動的にバッテリーに電気を送り続けてくれます。
バッテリー上がりを予防するメンテナンス充電を自動で行ないつづけてくれるというのも、車にソーラーパネルを設置するメリットではないかと思います。
車にソーラーパネルを設置することのデメリット
続いては、車にソーラーパネルを設置することのデメリットについてお話していきます。
【デメリットその1】ソーラーパネルの選定が難しい
ここまで記事を読み進めてくるとわかると思うのですが、車へのソーラーパネルの設置でいちばん大切なことは、適切な大きさのソーラーパネルを購入しなければならないということです。
暗電流の測定や、自己放電量の推定など、メカに詳しくない人にとっては、何のことだかわからないというのが実際の感想だと思います。
一つひとつを丁寧に理解していけばなんとかなるレベルの話なのですが、このようなことを考えなければならないというのが、DIYソーラーパネル設置のデメリットだと思います。
【デメリットその2】4000~5000円の費用がかかる
次に、ソーラーパネルを車に設置するデメリットとして考えられるのは、4000~5000円ぐらいのお金が必要になるということです。
車用のソーラーパネルは安いもの(発電電流の小さいもの)を探せば2000円ぐらいで購入できたりします。
ですが、車にソーラーパネルを設置してみると分かることなのですが、ソーラーパネルの実際の発電電流は、カタログ値の1/4程度になってしまうことがほとんどです。
こちらは、実際に私の車に設置したソーラーパネルの発電電流(カタログ値は500mA)を測定した結果です。
晴天の場合;100~150mA
くもりや雨の場合;20~50mA
このような感じで、車の中にソーラーパネルを設置した場合、フロントガラスなどで太陽光が反射されてしまったり、最適な角度に取り付け出来なかったりなどの影響で、発電電流は晴天時でもカタログ値の1/4程度しか流れません。
車種によって少し事情は異なるかもしれませんが、一般的な乗用車の場合、少なくともカタログ上の発電電流値が500mA程度はあるものでないと、なかなかソーラーパネルを設置した効果を体感しにくいのではないかと思います。
このように、暗電流や自己放電を賄えるだけの発電ができるソーラーパネルを買おうと思うと、思っていたより費用がかさんでしまうということになるのがソーラーパネル設置のデメリットだと思います。
【デメリットその2】取り付けが面倒
ソーラーパネルを車に設置するためには、細かな配線作業が必要となります。
DIYが得意な人であれば、チャチャチャっとできるかもしれませんが、初めて車の配線をいじる人にとっては、少しむずかしいことに思えるかもしれません。
これも、ソーラーパネルを車にDIY設置するデメリットと言えるでしょう。
ただし、外車の場合だと、エンジンOFFでもシーガーライターが通電しているので、付属のシーガープラグ配線を挿入すだけで配線作業は完了しますので、ご参考まで。
最後に一言
今回は、【バッテリー上がり防止】自動車用ソーラーパネルをDIY取り付けする方法についてお話しました。
長期的な効果は今後報告していきますが、ファーストインプレッションとしてはかなりいい印象です。
是非参考にしてみてくださいね。
それでは!