冷媒の補充でエアコンの効き良くなるかどうか事前に判断する方法
カーエアコンに冷媒を補充する前に考えておかなければならないことは、冷媒を補充すればエアコンの効きが良くなる可能性があるのかということ。
冷媒を補充したのにエアコンが直らなかった・・・なんてことになったらショックなので、まずはここで紹介する内容を理解して、あなたの車のエアコンが冷媒を補充すれば直るのかどうか判断していきましょう。
【判断方法その1】暑い日だけエアコンの効きが弱い場合
夏場の特に暑い日だけエアコンの効きが弱くなるような場合は、逆に言うと暑くない日はエアコンがちゃんと動いているということになるので、エアコンの構成部品が壊れている可能性は少ないといっていいでしょう。
このような場合は、先ほど述べてきた通り、カーエアコンから毎年少しずつ冷媒が漏れていき、暑い日に車内を冷やすために必要な分の冷媒量より、カーエアコンの中に残っている冷媒量が少なくなってしまっている(厳密に言うと、コンデンサーの凝縮圧力が下がって車外に熱を放出できない)ので、暑い時だけエアコンがあまり効かないということになってしまいます。
このような状態で冷媒が足りていない場合、真夏の暑い日にエアコンの設定を以下のようにした状態でエアコンの吹き出し口の温度を測定してみてください。
吹き出し口温度測定する時のエアコン設定
- AC;ON
- 設定風量;最弱
- 設定温度;最低
- 空気取込;内気循環(外気は取り込まない状態)
冷媒が足りていない場合は、吹き出し口温度が10℃以上になってしまっていると思います。
ちなみに、冷媒量が正常の場合、この設定に合わせると吹き出し口温度は10℃以下になります。
逆に言うと、このような微量な冷媒が不足の場合は気温の下がってくる夜間はエアコンがちゃんと冷えることが多いので、このような場合はエアコンの冷媒ガス補充で対応できる可能性は高いと言えます。
【判断方法その2】サイトグラスが白い泡だらけ
冷媒漏れによる能力ダウンが疑われる場合、カーエアコンをONにしているとき(ブゥーーンという音と共にエンジンルームのファンが回っているとき)に車のボンネットの中にあるサイトグラスというガラス窓から冷媒の状態を確認すると、白い泡交じりの冷媒が勢い良く流れてくるのが見えると思います。
その様子は、こちらで紹介されているYouTube動画を見てもらうとよく分かると思います。
どうしてサイトグラスに白い泡交じりで冷媒が流れている状態だと冷媒が不足しているという判断ができるのかというと、このサイトグラスというパーツは凝縮器(コンデンサー)という熱を車外に放出するアルミ製の熱交換器の後に取り付けられており、規定量の冷媒が充填されていればこの位置での冷媒の状態は完全な液体か、またはちょろっと気泡が混じっている程度になっていて、サイトグラスからは何も見えない(完全な液体であれば気体が混じっていないため、白い泡状のものは見えない)はずだからです。
このように、適正な量の冷媒漏れによって何年かかけながら冷媒が漏れていってしまい、サイトグラスで冷媒が白い泡のような状態で勢い良く流れているようなケースでは、単に減ってしまった冷媒を補充してあげればエアコンの性能が回復する可能性が高いと考えてよいでしょう。
ちなみにサイトグラスがない車の場合は、エアコンの低圧ポート(キャップにLの表示がある)の配管表面温度を測定することでも冷媒の不足を確認することができます。
例えば、低圧ポートはエバポレーター(蒸発器、車内に冷気を出すパーツ)の下流側に設置されているため、この配管温度が外気温と同じぐらい十分に高い場合、冷媒量が不足している可能性があります。
逆に、この部分の配管の温度が十分に低い(蒸発温度より少し高い5~10℃ぐらい)の場合、冷媒の量は適量であると判断できます。
ホームセンター等に売られている非接触タイプの温度計(2000円程度)などで配管温度を測定してもいいですし、ちょっと配管を触ってみて冷たくなければ冷媒量が不足している可能性がありますので、ご参考まで。
【判断方法その3】低圧圧力が少しだけ低い
カーエアコンの冷媒ガスが不足している場合、エアコン動作時(コンプレッサー動作時)の低圧圧力が極端に低くなります。
例えば、R134aの場合、安定時の適正冷媒圧力は約0.2MPa(ゲージ圧)程度なのですが、冷媒ガスが抜けてしまっている場合、その圧力が0.1MPa前後ぐらいまで少しだけ低くなってきているはずです。
これぐらいのレベルだと冷媒ガスの補充でエアコンの冷えが回復する可能性があります。
それよりも低圧圧力が低い、例えば0~-0.1MPaの範囲にある場合は、もう完全に冷媒がなくなっているような状況(冷媒漏れがひどい状況)ですので、例え冷媒補充を行なったとしても、すぐに冷媒が抜けてしまいますので、冷媒漏れの修理が必要でしょう。
ただし、そのことを承知の上で、冷媒を補充してみてどのくらいの期間、カーエアコンが動くのかどうか見てみたいという人は、下のPDFを参考に必要な冷媒量を充填してみましょう。
このデータ集を見ると分かると思いますが、カーエアコンの中が空っぽの状態からエアコンが正常に作動するレベルにするには、結構な量の冷媒が必要になりますね。
普通、適正なリーク量で10年ぐらい経ち、冷媒の効きが悪くなる場合、毎年3~5gづつ冷媒が減っていくわけなので、補充する冷媒の量は30~50g程度、ちょっとカーエアコンの使い方が悪かった場合でもせいぜい100gぐらい(200gのサービス缶の半分ぐらい)の冷媒補充で済むはずです。
これらのことを考えると、焼き付き防止装置が働くような状況は相当な量のリークが発生している可能性がありますので、たとえ冷媒を補充したとしてもまたすぐに漏れ出してしまうと思いますので、冷媒のガスの補充でエアコンが直るとは考えない方が良いでしょう。
なお、カーエアコンの低圧圧力は冷媒を充填する際に使うチャージホースについている低圧圧力ゲージ(約1000円)のガス缶側を全閉の状態で測定できます。
【注記】
本来であれば、エアコン動作時の低圧側と高圧側の冷媒圧力をゲージマニホールド(安いものでも約5000円ぐらいから)で測ることでより、正確にエアコンの故障箇所を特定することが出来ます。
例えば・・・
- 高圧、低圧とも適正圧力より低い
→冷媒漏れ、膨張弁のつまり - 高圧、低圧とも適正圧力より高い
→過充填(冷媒の入れすぎ) あるいは コンデンサの冷却不良(冷却ファンの回転不足とか) - 高圧が適正圧力より低く、低圧が適正圧力より高い
→コンプレッサ異常(内部のシール漏れなど)
【R134aの適正圧力】(すべてゲージ圧力、夏季条件、1500~2000rpm安定時)
- クールダウン開始時点
高圧=2~2.2MPa(20~22kgf/cm2)程度
低圧=0.1~0.3MPa(1~3kgf/cm2)程度 - 安定時
高圧=1.3~1.6MPa(13~16kgf/cm2)程度
低圧=0.18~0.22MPa(1.8~2.2kgf/cm2)程度
低圧圧力が低くなるのは冷媒漏れか、膨張弁のつまりとなりますが、一般的なカーエアコンの場合、膨張弁に異物(金属カスや氷)が入り込まないような工夫がされていますので、低圧圧力が低くなってしまう原因は冷媒ガス漏れだと判断していいのではないかと考えます。
ですので、コンプレッサーは動いているものの低圧圧力が低いという条件を満たす場合、冷媒漏れがカーエアコンが冷えない原因になっている可能性が非常に高いと言えます。
低圧圧力を測定するだけなら、1000円ぐらいのチャージホースについている低圧ゲージで出来ますので、出費を抑えたいという場合は、上記のような考え方をしていくといいと思います。
なお、素人でも簡単にエアコンの冷媒封入量をチェックすることが出来るツール(約2000円)がありましたので、こちらの記事で紹介しておきます。
>>【補充ガスチャージ前に】車のエアコン冷媒量をDIYチェックする方法
【判断方法その4】それ以外の場合
上記でお話した通り、「エアコン(コンプレッサー)は動いているのだけれど、ちょっと冷えがトロいなぁ」という場合は、エアコンガスの補充でエアコンの効きが戻る場合があります。
逆にそれ以外の場合、例えば、エアコンのスイッチを入れても全くコンプレッサーが動かない(アイドルアップしない)とか、夜の比較的涼しい時間帯でもエアコンが全く冷えないという場合は、冷媒ガスの漏れがひどかったり、それ以外の部品の故障が考えられます。
判断方法1~3のように、カーエアコンの冷媒ガス補充は、正常な範囲での冷媒漏れが原因の場合にのみ有効な方法になります。
冷媒不足でないのに冷媒を充填した場合、カーエアコン内の圧が高くなりすぎて、壊れていなかったパーツまで壊してしまう可能性もあります。
「カーエアコンの冷えが弱いのは、冷媒が適正量足りていないだけだ」という確信があって、作業を自己責任で行えるという場合以外は、プロに修理を依頼した方がいいでしょう。
なお、カーエアコンの修理を依頼する場合に気をつけたほうがいいことについては、7ページ目のQ&Aでお話していますので、ご参考まで。
次のページでは、カーエアコンに冷媒ガスをDIY補充するために必要な道具についてお話していきます。